江戸川データブック・2

これらの記事群は昭和57年(1982年)〜昭和58年(1983年)におきた、悪い方で江戸川競艇場を有名にしてしまった不正発券事件の顛末です。
なお、このページに関しては古い記事から順番に掲載しております。
また、記録としての重要性と公務員の公人性を加味した上で、当時の関係者に関しては容疑者・被告以外は実名にて掲載いたします。
最後に、言うまでもなく本コンテンツは特定の人物を貶めることが目的ではないことを重ねて申し上げます。

2000年9月13日 記事4点追加



江戸川競艇で不正発券 発走見て当たり券追加 6レース分2200万円蒸発 1988.02.24

 東京・江戸川区の江戸川競艇場(正式名称・江戸川競走場)で開かれている「江戸川競艇」で、主催者の東京都六市競艇事業組合(管理者・大下勝正町田市長。八王子、武蔵野、昭島、調布、小金井、町田の六市で組織)の幹部が、さる57年から59年にかけ、舟券の発売が締め切られた後職員に指示、的中を見越して大量の舟券を追加発行させていたことが、23日までの同組合などの調査で明らかになった。追加発行額は一回あたり5万円から20万円にものぼり、中央集計センターで配当を操作させた結果、これまでわかっただけでも約2200万円が不正に支払われている。同組合では同日、調査委員会を設置、職員の証言から追加発行を指示したA幹部から事情聴取を開始する。警視庁でも詐欺、モーターボート競走法違反の疑いが強いとみて事実関係の調査を始めた。また運輸省も、事業組合の上部団体、全国モーターボート競走施行者協議会に調査を指示した。
 A幹部は現在総務担当参事。当時は、事務局次長で、投票券関係の責任者だった。59年4月に、事務局長に昇任したが、その直後、組合理事者に、同参事に不明朗なうわさがあるとの投書が寄せられたため、一か月余りで現職に横すべりさせられた。この投書について、当時、大下市長が本人を問いただしたところ「疑惑を持たれることは一切ない」と否定したという。
 六市競艇事業組合などのこれまでの調べによると、舟券の不正発行が最初に行われたのは、57年12月5日に同競艇場で行われた第九レースで、舟券の発売が締め切られて、スタート直後、同組合のA幹部が計算事務を行っている中央集計センターに対して「当たり券の売り上げを増やせ」と指示する一方、予備の発券機で「5―1」の舟券の追加発行が行われた。
 同組合の調べによると、この追加発行分は20万円で、これに対する配当は51.6倍だったため、配当の1032万円が不正に支払われていた。
 このほか同じ方法による舟券の不正発行と配当は、わかっただけでも同12月15日の第10レースで不正発行10万円に対して配当金が100万円、同12月27日第7レースが5万円で308万5千円、58年2月22日第10レースが20万円で182万円、同3月17日第9レースが20万円で250万円、同12月29日第10レースが20万円で330万円と、不正発行額の総額が95万円に対して配当が2202万5千円にのぼっている。
 同組合などによると、舟券の集計事務は舟券の発売締め切りと同時に中央集計センターで開始、それ以降の発売は禁止されている。
 今回の場合、だれが追加発行を受け、配当を受け取ったかについてはいまのところ明らかになっていない。しかし競艇の場合、スタート直後に勝負が決まることが多いため、A幹部がこれを見計らって直接センターに指示して当たり券の枚数を増やすとともに、つじつまを合わせるため、はずれ券の枚数を同数減らすよう指示していた。この不正操作により、当たり券が水増しされるため配当倍率が下がることになり、例えば57年12月5日の第9レースの場合、本当の配当倍率は六七・三倍なのに五一・六倍に、また同十二月二十七日第七レースは67.3倍が61.7倍に下がっており、当たり券の購入者が損をしたかたちになっている。
 警視庁は、今回の不正発券が、発走前に発券を終了することを定めたモーターボート競走法施行規則七条に違反する疑いもあるとみているほか、詐欺などの疑いもあるとして 調査に乗り出した。
 A幹部は「番号を間違って買った客の申し出でやった。私腹をこやしたことはない」と弁明している。
 江戸川競艇場(江戸川区東小松川三の一の一)は関東興業株式会社所有。八王子など六市競艇事業組合と、多摩、稲城、秋川の三市収益事業組合が主催。
 61年度の投票券発売額は533億円。8%の約42億6千万円が六市の収益になる。

 ◆組織ぐるみか 隠密発券ムリ 運輸省が調査へ◆

 運輸省は23日、都六市競艇事業組合の上部団体に当たる全国モーターボート競走施行者協議会(代表・堀家重俊丸亀市長)に対し、調査を進めるよう指示するなど事実確認に乗り出した。発券システム上は、当たり券の水増し発券をひそかに行うのは難しいことから、同省は「組織を巻き込んだ不祥事に発展する可能性も考えられる」として強いショックを受けている。
 運輸省によると、舟券の発売は、モーターボート競走法施行規則七条によって、ボートがスタートする前に締め切らなければならないことになっており、発券担当職員が「発売締め切り」と叫ぶと同時に発売窓口が閉鎖され、発券端末機と、それを操作する制御卓のスイッチも切れて発券できなくなる。
 この後で発券するには、制御卓のスイッチを入れて発券端末機を操作するか、ミス発券分の枚数調整のため使う「加減機」を作動させるしかない。
 しかし、いずれも、事務所内にいる職員に聞こえるほどの音が出るため、同省は「水増し発券をひそかに行うのは無理」と、不正が他の職員にも知られた状態で行われていたことを強くにおわせている。


江戸川競艇不正舟券で本格捜査 投票委員も関与? 配当換金の印鑑押す 1988.02.24

 東京・江戸川区の「江戸川競艇」で、主催者の東京都六市競艇事業組合(管理者・大下勝正町田市長、八王子市など六市で組織)のA総務担当参事(57)が当たり券を不正発行させ、2200万円が“蒸発”していた事件で、警視庁保安一課と小松川署は24日朝から同組合事務局に捜査員を派遣し、本格的な捜査を始めた。関係者に対し、同参事は「仲間割れしなければ大丈夫」と語っていたことが判明しており、同署では発言事実の特定を急いでいる。また、同組合ではA参事を同日付で自宅待機処分とした。一方、運輸省も同日午前、同組合の梅林春男事務局長から事情聴取するとともに、全国モーターボート施行者協議会に同種の不正がないか全国規模の調査を指示した。
 同署などの調べによると、モーターボート競走法では、舟券の発売はボートの発売前に締め切られ、この後での発売は禁止されている。窓口の発売機のスイッチは、締め切り後は自動的に切れ、発券はストップする。このため今回のようにスタート後に発券する場合は、ミス発券などだけに使用される予備機で発券されていることがわかった。
 正規の舟券には裏側にバーコードが印刷されているが、今回のように締め切り後に予備機で発行されるものについてはバーコードが印刷されておらず、通常の窓口での換金はできない。
 バーコードなしの舟券の換金には組合職員の投票委員の印鑑が必要で、これがあれば配当金の支払いを受けられるが、一レースごとに20万円もの当たり券が換金されたことは前例がなく、今回のケースでは印鑑を押した投票委員も不正発行の事実を知っていた可能性もあるとみている。
 投票委員は競艇場内の窓口がある建物ごとに計七人おり、今回の場合、印鑑はA参事の指示で押されたが、「バレたら大変ではないか」と指摘する職員にA参事は「仲間割れ さえしなければ大丈夫だ」と説得していたという。
 また、A参事を直接、問いただした同組合幹部も〈1〉追加発行した券のほとんどすべてが的中しており、極めて不自然〈2〉わずか二分前後のレースの間に追加発行し、配当金を訂正しており、追加発行後の操作はあらかじめ計画されたとの疑いが残る〈3〉疑惑が指摘された六レースに関する組合の内部書類の一部につじつま合わせをしたととれる改ざんの跡が残っている−−と次々と疑惑を指摘している。
 このため、同署では捜査員三人を組合事務局に急ぎ派遣、疑惑の六レースを中心に追加発行の事実関係について、関係者から事情聴取した。
 同署では、追加発行の事実はほぼ間違いないと見ているが、問題は当たり券の追加発行がA参事の独断で行われたかどうかで、同署は同日中にもA参事からも事情を聞き、追加発行券を手にした人物の特定や配当金の行方を調べることにしている。
 これまでの組合の調査によると、不正発券が行われたのは、スタートからゴールまでのわずか二分の間。同署では、こうした短時間に不正発券が可能となったのは、コンピューターの操作に精通した内部関係者の“連係プレー”があるとみてさらにくわしく調べることにしている。
 また、組合管理者の大下勝正町田市長は24日の記者会見で、勝舟投票券の不正発券の疑惑で、同組合の参事を自宅待機とするとともに、組合加盟の六市から財政担当者一人ずつを出し、六人の理事長(いずれも市長)と合わせて12人で幹事会を組織、疑惑の究明にあたることを明らかにした。
 大下市長は「腰を落ちつけて調べたい。組織ぐるみということはなく、あくまで個人によるものだ」としている。
 一方、運輸省は同日、都六市競艇事業組合の梅沢事務局長ら幹部二人を呼び、事情聴取するとともに、4年前に大下町田市長が中心になって行った不正疑惑調査の記録を提出、問題のレース結果記録表などのデータの照合チェックを行うよう指示した。
 同省では今後、不正の疑惑が濃厚になれば、57、58年度以外のレースについても、六市組合への立入調査を行うなどして調べることにしている。
 さらに、不正発券が他の競艇場でも行われていたとの情報もあることから、上部団体の全国モーターボート競走施行者協議会の吉村竹貴理事長に対し、舟券の発売を締め切った後で発券したような事実が全国二十四か所の競艇場で行われていなかったかどうか調べるよう指示した。


3月のレース中止 相次ぐ不祥事の東京・江戸川競艇 1988.02.254

 相次ぐ不祥事が明るみに出た同組合は24日、3月11日から14日までと18日から22日までの計9日間90レース(競艇恐怖新聞社注・当時は10レース制)を自粛すると運輸省に報告した。
 この措置について六市組合の大下市長は「三月中に真相を解明する。それまではレースを開くことは自粛したい」と説明。開催場が同じ多摩、稲城、秋川市で構成する東京都三市収益事業組合(管理者・臼井千秋多摩市長)も三月中のレース開催の中止を決めた。


東京・江戸川競艇 舟券不正発券で職員ら聴取 同時期、公金流用も/警視庁 1988.02.25

 東京都江戸川区の「江戸川競艇」を舞台にした舟券不正発券事件で、警視庁捜査二課と小松川署は24日、主催者の東京都六市競艇事業組合(管理者・大下勝正町田市長)のA総務担当参事(57)から当たり券の追加発券を指示された元投票本部集計担当者(50)や退職者ら計六人から事情聴取した。この結果、追加発券分の的中券は、代金が払い込まれていないカラ発行であったにもかかわらず、A参事の指示でコンピューターの操作が行われ、配当金が何者かによって換金されていることがわかった。また、同時期に同組合内部でA参事を含む幹部五人の公金流用事件が発覚、ひそかに処分が行われていたことも明るみに出た。
 調べによると、A参事は窓口での舟券発売を締め切った後、場内の投票集計センターの担当者に「次のレースの的中券を2000票追加してほしい」と指示。担当者はセンター内のモニターテレビに映し出されるレースを見ながら、勝敗がほぼ決まった時点で1、2位の組み合わせの的中券の追加発券をコンピューターに入力していた。
 一方、これに見合う舟券は、発券が締め切られた後のため予備発券機で打ち出されており、58年12月29日の第10レースの場合、A参事の指示でレース終了後、舟券発売所窓口にある予備発券機「A―76」で的中券の「5―6」が二十万円分打ち出されていることがわかった。
 これら証言をもとに同署で調べた結果、追加発行分については、舟券代金は払い込まれておらず、まったくのカラ発行と判明。つじつまを合わせるため、同数のはずれ券を減らすよう指示していた。カラ発行された舟券にだれが投票委員の検印を受け、だれが窓口で換金したか、いまのところ明らかになっておらず、A参事が全容を知っているものと見られる。このため、同課は一両日中にもA参事からも事情を聞く方針。
 A参事は担当者に、いつも2000票の追加を指示していたが、高額配当が予想される穴レースでは追加発券によって配当が大幅に下がるため、担当者の判断で追加分を500票に抑えたこともあった。
 こうした疑惑について、同組合には59年2月ごろ、内部告発が寄せられたが、組合側は徹底した調査を行わなかったため、結果的に「臭い物にフタ」となった。
 また、公金流用が指摘されているのは58年から59年にかけて。競艇場内の同組合事務所には、レース当日に当たり券の払い戻しを受けなかったファンのために用意した「前渡し金」が金庫に納められているが、A参事と現、元課長四人の幹部五人は、この公金を勝手に引き出し、個人的に流用していた。
 関係者の証言によると、A参事は58年5月に300万円を借りた後、59年1月に100万円を返したが、残りの返済は同年4月にズレ込んだ。またある課長(56)は50万円を流用、五人とも遊興費などにあてていた。
 A参事らは、金を受け取る都度、「借用書」を差し入れていたが、さる59年春、不正流用の事実を告発する文書が出回り、管理者サイドもこの事実を確認したため、同年夏、現、元課長4人に対し、それぞれ始末書を書かせた。しかし、A参事はなぜか、事実上不問に付されていた。
 清水律・同組合総務課長は「流用したのは2、3日で返せる程度の金額で、その穴はすぐに埋まったはず」と話しているが、こうした公私混同は十数年来の“慣習”といわれ、組合幹部も「事務室の机の上には厚い札束が無造作に置かれていたり、毎日多額の現金を払い戻したりしているうちに、金銭感覚がマヒしたとしかいえない」と話している。


不正舟券 不信つのる競艇ファン 徹底究明と監督強化急げ(解説) 1988.02.25

 東京・江戸川競艇場で明るみに出たレース開始後の不正発券事件は、競艇ファンの間に不信感と怒りをかき立てた。(社会部 鶴岡 憲一)
 「売り上げのうちレース開催者が二五%も取り、配当分が75%しかないのは不満。でも、レースそのものは自治体が主催者だからと信用して楽しんでいたのに」。事件を知った競艇ファンの一人、東京都板橋区、会社員Aさん(34)は怒りをぶちまけた。
 競艇や競馬といった公営ギャンブルで起こる不正といえば、選手の八百長かファン側の当たり券偽造というパターンが通例で、まさか、主催者の事務所の中で不正が行われて いるかもしれないと想像できた人は少ないのではないか。
 モーターボート競走法に基づいて行われる競艇の場合、主催者は自治体単独か、複数の自治体で構成する事業組合で、その数は現在、一県と百五十二市町村に上っている。
 こうした自治体は、立ち入り調査権やレース開催停止権限を持つ運輸省によって監督されており、開催団体の事業組合職員も地方公務員のため、ファンの信頼度も高かった。
 ところが、今回の事件は、東京都六市競艇事業組合が57、58年度に開いたレースの際、主催者事務所内で、レース開始後には発券してはならないという法令とファンとの信頼関係に反し、当たり券を発行していたとみられるものだけに、起こした波紋は大きい。
 この当たり券が追加発行されたため、問題レースの配当率は、たとえば規定通り、スタート後の発券が行われていなければ67.3倍だったはずなのに51.6倍に下がるな ど、せっかく当たり券を買ったファンに、具体的な損害を発生させていた。
 このような不正を、なぜ行い得たのか。六市組合や運輸省、警察当局の本格的調査は始まったばかりで、全体像はまだ明確でない点もある。
 しかし、問題なのは、すでに四年前に、投書をきっかけにこの疑惑が表面化していたにもかかわらず、その時点での六市組合の調査が不十分だったとみられる点である。六市組合だけでなく、運輸省も、この疑惑の焦点になっていた組合幹部について降格人事が行われていたのに、理由を問い合わせてもいなかった。
 前回調査で、職員による経費前渡し金のズサンな使い方が判明していたというが、こうした職場事情も不正発券の遠因だったのではないか。だからこそ徹底調査すべきだったのに不十分だったため、不信感を増幅させた中で再調査を迫られるハメになったわけだ。
 しかも、今回の再調査に当たっても、同省担当官は「不正発券を内密で行うのは困難」と、複数の職員が絡んでいた可能性を強く指摘しているのに、同省内の別の幹部や六市組合の中から「個人的な不祥事とみられる」という見方が表明されるなど、再調査はスタート早々から混乱を見せている。
 競艇の年間売上額は、55年度の1兆6309億円をピークに減り続け、競艇場に入場するファンも50年度の4500万人を頂点として減少の一途をたどってきていた。
 しかし、売り上げは60年度に上向きに転じて、昨年度は約1兆5000億円と前年度より約670億円増加。入場者も昨年度に増勢を取り戻して前年度より0.8%多い3444万人を記録するなど、わずかながら人気回復の兆しを見せていた。
 こうした折の不正発覚だけに、その影響はファンの怒りを招いただけでなく、主催者自身にとってもダメージを与え、実績低下に結びつく可能性をはらんでいる。
 このような不正が再び発生するのを防ぎ、ファンの信頼を取り戻すためには、当事者の六市組合はもちろん、監督者の運輸省も、追加発行された当たり券の行方や、換金されていた場合にはその流れに至るまで疑惑を残さないほど徹底した調査を行い、開催者の内部チェック体制も見直すべきだ。
 さらに、全国の競艇ファンの不信感を解消するため、他の地域の開催団体も改めて自主点検を行う必要がある。


東京・江戸川競艇不正舟券は事務所内で換金 複数の幹部関与 遊興費に使用か 1988.02.25

 東京・江戸川区の江戸川競艇を舞台にした舟券不正発行事件を捜査している警視庁捜査二課と小松川署は、25日までの関係者の事情聴取で、投票締め切り後に主催者の東京都六市競艇事業組合(管理者・大下勝正町田市長)のA総務担当参事(57)の指示で発行された追加舟券は事務所の窓口から外へは持ち出されておらず、レースの売上金などを勝手に取りくずして換金されていた、との証言を得た。このため追加発行された当たり券の換金は、A参事をはじめ現場幹部数人の合意のもとに行われていた疑いが強まり、これら不正に換金された金の一部は、プールされて幹部らの遊興費につかわれたとの証言も出ており、同課ではきょうにもA参事から事情聴取する。
 これまでの調べでは、発券締め切り後、A参事の指示で予備の発券機で追加発行された不正舟券は、だれの手に渡り、どのようにして換金されたのかナゾとなっていた。ところが同課がA参事から追加発券を指示された本部集計担当者(50)や退職者、女性職員ら六人から事情聴取した結果、追加発行された的中券は、事務所内から外部へは持ち出されておらず、事務所内に一時保管。これら舟券は、後日の検査などに備えて、換金のために必要な投票係の印鑑を受けていたが、換金は正規の払い戻し口を通さず、追加券を的中券の中にまぎれ込ませるとともに、当日の売り上げなど事務所内に集まる現金から的中した分の配当金を抜き取っていたことがわかった。
 これまでの組合などの調査で、こうした不正発券は57年から58年にかけて、計六回行われていたことが確認されているが、関係者はそのレース選択はA参事が決めていた、と証言。しかし、時には、別の幹部の依頼を受けて、A参事が担当者に追加発券を指示することもあったといい、今回の不正事件が複数の幹部職員が関与した組織的な 犯行であることが明らかになった。
 これら換金された配当金は、一時プールされた後、これに関与した数人の幹部によって遊興費などに使われていた疑いが強くなっている。
 同組合内部では、不正発行が行われた前後の58年から59年にかけ、払い戻し用に用意されていた「前渡し金」をA参事ら幹部が勝手に借用。この公金流用が内部告発で発覚後、あわてて返還されており、同課では今回の不正発行との関連を追及する。


損害のファン、結局泣き寝入り 当たり券買った証明不能/江戸川競艇不正事件 1988.02.26

 江戸川競艇での当たり券追加発行事件で、主催者の東京都六市競艇事業組合は元事務局長の告発に踏み切り、不正発券が行われていたことを確認したかたちになったが、ここで問題になるのは、当たり券の不正発行によって、該当レースの配当率が下がってしまい、ファンが結果的に、正常発行の場合より少額の配当金しかもらえなかった損害分の補償の仕方。
 不正発券された6つのレースでは、いずれも倍率が下がっている。競艇の主催者側の不正行為によって、配当率が通常発券の場合と比べて不当に下がってしまったケースは今回が初めてだが、監督官庁の運輸省では、不正発券が行われた57、58年度の計6レースで当たり券を買った客が、この補償を求めることもあり得ないことではないとみて、二つのケースの対応方法を検討した。
 第一は当時、配当金を受け取った客が、追加支払いを求めてきた場合。しかし、当時すでに当たり券を六市組合側が受け取って配当金を支払っているので、客側には「当たり券を買った」ことを証明する方法がない。したがって、不正発券によって減額した分を払うことは不可能。
 第二は、当たり券を買った客が配当金と交換せずに、いまでも持ち続けている場合。これも当たり券の有効期間は六十日なので、配当金受け取り権そのものが時効にかかって消滅してしまっている−−とし、いずれにしても、当時、当たり券を買った客が、不正発券による配当率低下分の差額配当金を改めて払うよう求めても対処のしようがないとしている。
 このため、当たり券を買った客は、不当に少なくなった分の配当金を取り戻す手段が無いまま泣き寝入りせざるを得なくなりそうだ。


東京・江戸川競艇舟券不正 ○○参事を告発 一連の横領疑惑に組合調査委 1988.02.26

 東京・江戸川区の江戸川競艇を舞台にした的中舟券の不正発行事件で、主催者の東京都六市競艇事業組合(管理者・大下勝正町田市長)は二十五日午後、追加舟券の発行を指示した○○○○(原文・よみがな)同組合総務担当参事(57)(原文・住所)を業務上横領容疑で警視庁に口頭で告発した。来週中にも文書による正式な告発状を提出するが、この日の告発は「江戸川競艇における一連の不祥事」という表現を使っており、同組合自体、○○参事がどのような不正行為を行っていたか十分に把握し切れていない実情をさらけ出した。警視庁ではこの告発を受け、これまで明らかになっている的中舟券約2200万円分の不正発行と払戻金300万円の着服を重点にきょう26日にも○○参事を取り調べ、事件の全容解明を急ぐ。
 ○○参事が関与したとみられる不正事件は、〈1〉57年12月から58年12月にかけて、同組合などが開催した六レースで計10500票の的中券が予備発券機で追加発行され、配当金2202万5千円が何者かによって換金された〈2〉58年5月20日、競艇場事務所内に保管されている払い戻し用の前渡金の中から300万円が着服された−−の二件。
 告発はこの二件に関したもので警視庁は組合から57、58年分のレース記録、売り上げ、払い戻し記録などの書類の任意提出を受け、金の流れを中心に捜査を進めている。
 ○○参事を告発した競艇事業組合は同日、あわただしい動きをみせた。この日午前11時過ぎ、大下町田市長ら六人の理事が東京・府中市の東京自治会館で緊急理事会を開き、「今や真相を究明するには一刻の猶予も許されない」として、全員一致で告発を決定。
 大下市長らは午後三時過ぎ警視庁捜査二課に向かい、告発内容を読み上げた。「江戸川競艇における一連の不祥事に○○参事が深くかかわっていると思料し、告発する……」。
 内部調査に限界を感じたのか、告発状もないまま警視庁にゲタを預ける異例の措置だった。
 大下市長らは運輸省に告発を報告した後、午後六時過ぎ、東京自治会館に戻り第一回調査委員会を開き、○○参事を呼んで「あなたを本日、警視庁に告発しました」と通告。
「当局には誠心誠意ご協力下さい」とも要請した。○○参事は神妙な表情で、口ごもりながら何か釈明しようとしたが、大下市長らはこれをさえぎって「お引き取り下さい」とピシャリ。○○参事は取り囲んだ報道関係者に茶色のジャンパーで顔をおおいながら「何も言うことはありません」と言っただけで同会館を後にした。
 その後記者会見した大下市長は理事者を代表し、「今後は一日も早く疑惑が解明されるよう、捜査に全面的に協力する」と語り、同席した五人の理事者も「ファンの皆さまに対する信頼回復に努めたい」と決意を述べた。

 ◆オシャレに金…派手好み 黒いウワサの○○参事◆

 告発された○○参事は三重県出身。地元の工業高卒後、明治大商学部夜間部に通いながら、昭和二十五年東京都庁に入り、総務局統計部から公営ギャンブル担当部門の事業部事業第三課に移った後、財務局営繕工事部工務係長に昇格。しかし、48年、当時の美濃部都政が公営ギャンブル廃止に踏み切ったあおりで“人員整理”の対象となり、360万円の退職金を受け取って退職、東京都六市競艇事業組合に入った。
 同組合では、業務課長に納まった後、55年には事務局次長兼業務課長、58年局次長専任、五十九年四月に同局長と昇格。ところが、58年ごろから、不正発券や公金流用にかかわったとのウワサが広がり、四か月後には局長から現在の参事に降格させられていた。組合内部では「人あたりがよく面倒見がいい人」との評判がある一方、身づくろいに金をかけるなど、小遣いの使い方が派手だったとも。酒は飲まなかったが、かつての苦学生という印象は薄かった。


石原運輸相「再発防止に指導強める」/東京・江戸川競艇場の不正発券事件 1988.02.26

 26日開かれた閣議後の記者会見で、石原運輸相(競艇恐怖新聞社注・現東京都知事石原慎太郎)は江戸川競艇場の不正発券事件について「初めてのケースだけに、再発防止のため指導を強めたい」と述べた。


東京・江戸川競艇 ○○参事不正発券認める 的中券上乗せ指示 警視庁取り調べ 1988.02.26

 東京・江戸川競艇場を舞台にした東京都六市競艇事業組合(管理者・大下勝正町田市長)の不正発券、公金流用事件で、警視庁捜査二課と小松川署は26日、同組合から告発された○○○○総務担当参事(57)(原文・現住所)の取り調べを始めた。○○参事は調べに対し、集計担当者に指示して追加発券させたことや払い戻し用前渡金から300万円を流用した事実を認めており、同課では追加分の的中舟券の換金方法や流用金の使途などについて詳しく追及している。また一連の疑惑には他の幹部職員の関与も明らかになっており、同課では引き続き組合関係者から幅広く事情聴取、事件の背景となった組合のズサンな金銭管理体質も解明する方針。
 これまでの調べによると、○○参事が追加発券を指示していたのは57年12月から58年12月にかけて開催された計六レース。○○参事は集計担当者に各レース2000票から五百票の的中券を上乗せするよう指示、これに基づく換金分は、計約2200万円にのぼる。また58年5月、競艇場事務室内に保管されていた払い戻し用の前渡金の中から三百万円を引き出し流用していた。
 この日の調べに対し○○参事は、こうした事実関係についてはほぼ認めている。
 このため同課では、追加発券分についての換金のからくり、配当金や流用金の使途などを中心に聴取を続ける。
 また、これまでの調べで、公金流用は複数の幹部によって十数年間にわたって続けられ、追加発券分の配当金の一部が組合職員の遊興費に使われていたことが明るみに出ており、これら「ドンブリ勘定」の実態を解明する。
 ○○参事が流用した「前渡金」は、競艇の開催が終了した後、当たり舟券を換金するファンのために準備する「払戻金」。「前渡金」は一節あたり3000万―3500万円が用意され、事業課が毎日的中券と払い戻し状況、残額を照合することになっているが、○○の場合は、さる58年5月20日、300万円を流用したにもかかわらず、翌59年春、内部関係者の告発文書が出回るまで発覚しなかった。
 また、○○参事の指示で追加発行された的中券は、正規の払い戻し窓口を通さず、事務所内部の払戻金から勝手に換金されていたが、払戻金の取り扱いは会計処理原則に基づき、きわめて厳正な処理が定められている。ところが、追加発券操作が行われた58年12月29日の十レースでは、正規に発券された的中券を15枚も上回る舟券が換金されていたにもかかわらず、職員がこれに気付いたのは50日後。しかも、これだけの証拠がそろっていたのに、徹底調査は行われなかった。


売り上げ多い最終日狙った/江戸川競艇不正発券事件 1988.02.27

 東京・江戸川競艇を舞台にした不正発券、公金流用事件で、警視庁捜査二課の取り調べを受けた東京都六市競艇事業組合(管理者・大下勝正町田市長)の○○○○総務担当参事(57)は二十六日、さる五十七年からの水増し発券については認めた。同課では、追加発券が大量の的中券を上乗せできる最終日のメーンレースに照準を合わせた計画的な犯行との見方を強め、引き続ききょう二十七日も、同参事からの聴取を進める。


○○参事の事情聴取を続行 東京・江戸川競艇の不正発券、公金流用事件 1988.02.27

 東京・江戸川競艇を舞台にした不正発券、公金流用事件で、警視庁捜査二課と小松川署は二十七日も、東京都六市競艇事業組合の○○○○・総務担当参事(57)を呼び、任意で事情聴取を続けた。
 同課の調べに対し、○○参事は、レース開始後に当たり舟券を追加発行したことや、ファンに払い戻すための「前渡金」300万円を流用したことは認めたが、水増し発券については疑惑を否定。


江戸川競艇の不正舟券で特別委設置/緊急役員会開く  1988.02.28

 競艇を主催している自治体や事業組合で構成する「全国モーターボート競走施行者協議会」(会長・堀家重俊丸亀市長)は27日午後、東京・麹町の東条会館で緊急の役員会を開いて、江戸川競艇で発覚した的中舟券の不正発給事件について対策を検討、今後、特別委員会を設置して事件の全容解明にあたることを申し合わせた。役員会のあと堀家会長らが会見し「今回の不祥事は誠に遺憾」と陳謝した。


江戸川競艇疑惑、当たり舟券水増しに「八百長」と投書がきていた 1988.02.29

 東京・江戸川競艇を舞台にした当たり舟券の水増し疑惑で、警視庁捜査二課と小松川署に事情聴取されている都六市競艇事業組合の○○○○参事(57)が、当たり券の追加発券を始めた五十七年十二月、窓口に締め切り後とレース確定後にそれぞれ出される配当額の差に気づいたファンから「八百長ではないか」という抗議の投書が届いていたことが、二十八日までの元職員の証言でわかった。しかし、○○参事はこの元職員にファンにばれないよう(水増しを)適当に調整するように指示、水増し発券を続けていたという。
 警視庁は○○参事が着服目的に計画的に追加発券をしていたことを裏付ける証言として、同日、この元職員からも事情を聴いた。
 証言したのは、当時、同競艇場の発券業務に従事していたAさん(50)。
 Aさんの証言や警視庁の調べによると○○参事は、五十七年十二月から五十八年十二月まで、計六レースにわたりAさんに指示し、集計用のコンピューターを操作させ、当たり券計一万五百票(配当総額二千二百二万五千円)を追加発行していた。
 この追加発券の中で、五十七年十二月五日第九レースでは、○○参事(当時事務局次長)がAさんに「レース開始後、一、二位を予想して当たり券二千票を増やしてくれ」と指示。
Aさんがコンピューターを操作している女子職員に増票させたため、発券窓口締め切り直後には六十七・三倍だったオッズが、レース確定後には、五十一・六倍に落ちた。
 その後、不審に思ったファン数人から「第九レースのオッズの落ち込みはおかしい。故意に操作した八百長ではないのか」との抗議の投書が同競艇場に寄せられた。
 投書が届いた数日後、○○参事はその一通を手にして、Aさんに「こんなものが来た。これからはファンに感づかれないよう(水増しを)うまく調整してやってくれ」と指示したという。
 これまで、○○参事は警視庁の事情聴取に対して「水増し発券は、発走後ファンが『自分の頼んだ番号と違う券を渡された』と苦情を言ってきた場合に限りその票数分だけ行っていた」と説明していた。しかしこの証言では、○○参事が苦情件数に応じて当たり券を追加していたのではなく、自分の都合で水増ししていたことになることから、警視庁は○○参事が当たり券を追加発券させ、換金、着服していた疑いが強いとみている。


競艇疑惑 ○○参事が換金指示 職員が「配当渡した」と証言 1988.03.01

 東京・江戸川競艇を舞台にした不正発券、公金横領事件で、警視庁捜査二課と小松川署は29日までに、東京都六市競艇事業組合の○○○○・総務担当参事(57)が追加発行させた的中舟券は、同組合職員が正規の窓口で換金していたことをつかんだ。この職員は「窓口の発券ミスで追加発行した舟券を客に代わって払い戻して欲しい」と○○参事から命令されたと証言、換金された金は○○参事に手渡したという。しかし、同課の調べでは、一回あたり二十万円から五万円にのぼる大量の発券ミスが発生した事実は確認されておらず、同参事が一連の不正工作をごまかすためトラブルをでっち上げた疑いが強くなったとして詰めを急いでいる。
 調べによると、追加分の入力については担当職員が○○参事から「的中券を2000票(20万円)追加してほしい」などと依頼されたと証言、○○参事も同課の調べに対して発券を指示したことを認めた。この追加分には払い戻し窓口での換金に必要な投票委員の検印も押されていたが、追加券がどのような方法で換金されたかが着服の立証のカギになるとして事情聴取をしていた。
 この点について、当初は追加券は事務所内部で勝手に換金されていたとの情報があったが、その後の調べで、当時の払い戻し窓口の担当者が、顔見知りの組合の職員が大量の的中券を正規の窓口で換金したと証言。この職員から事情聴取した結果、○○参事から「窓口のミスで間違った舟券を発行された客の苦情で、舟券を発行し直した」と追加発行された的中券を渡されて換金を指示され、正規の窓口で払い戻しを受けた後、配当金を○○参事に渡したという証言を得た。
 このため同課では発券にまつわり、実際に客とのトラブルがあったかどうか調べを続けているが、20万円から5万円にも上る大量の発行ミスがあったことを証言する窓口職員はおらず、○○参事に渡った配当金が苦情を申し込んだという客に支払われたかどうかきわめて疑わしい。
 ○○参事は当時、同組合事務局次長で、実質的な現場の最高責任者。客の苦情への応対も一手に引き受けていた立場を利用、架空のトラブルをでっち上げて追加発券から換金までを職員に指示していたものと見て、同課ではさらに事情聴取を続ける。


東京・江戸川競艇疑惑 商品相場に失敗、配当金つぎ込む ○○を詐欺で捜査へ 1988.03.03

 東京・江戸川競艇場を舞台にした不正発券事件を捜査している警視庁捜査二課と小松川署は、三日までに東京都六市競艇事業組合から告発された○○○○・同組合総務担当参事(57)が、初めから配当金をだまし取る目的で的中券を追加発行させていた疑いが強まったとして、詐欺事件として近く強制捜査に乗り出す方針を固めた。○○参事は取り調べで「追加発行した的中券は部下に命じて換金したうえ、配当金を商品相場などにつぎ込んだ」と供述している。
 ○○参事は事情聴取に対し、当初、「窓口のミスで間違った舟券を発行された客の苦情で舟券を発行し直した。配当金を個人的目的に使ったことはない」と着服の事実を否認していたが、その後、「六回にわたって追加発行した当たり券(配当金総額約2200万円)のうち、4、5回分、約2000万円については払い戻した配当金の大部分を商品相場につぎ込んだ」と供述した。
 調べでは、○○参事はさる56年ごろから、小豆や砂糖、まゆなどの商品取引を始めたが、相場に失敗、五十七、八年当時、二千万円近い穴をあけて、その穴埋めに困っていた。部下に命じてさる57年12月から58年12月の六レースの配当金2202万5千円の払い戻しを受けさせ、相場の借金返済にあてていた。


競艇組合管理者の町田市長が辞表/東京・江戸川競艇舟券不正 1988.03.09

 東京・江戸川競艇を舞台にした的中舟券の不正発行問題で、同競艇を主催する東京都六市競艇事業組合管理者の大下勝正・町田市長は八日までに、「今回の不祥事に対する管理者責任を明確にしたい」として辞表を提出した。近く招集される理事会で承認される予定。


競艇疑惑の○○参事を逮捕 配当金2200万円を横領/警視庁 1988.03.12

 東京・江戸川競艇の不正発券事件で、警視庁捜査二課と小松川署は12日、約2200円の配当金の着服疑惑の中心人物として事情聴取を続けていた東京都六市競艇事業組合総務担当参事、○○○○(57)(原文・現住所)を業務上横領容疑で逮捕した。
 同課では、競艇ファンを裏切った不正がなかば日常的に行われていた疑いが強いとみて、同競艇場の“腐敗体質”を解明する。
 調べによると、○○はさる58年12月19日の第10レース開始直後、集計担当職員に対し、同レースの的中券「5―6」を20万円分追加してコンピューターに入力するよう指示。レース終了後、発券窓口の職員に当たり券を発行させたうえ、後日別の職員に払い戻し窓口で換金させ、配当金330万円を横領した疑い。
 このレースを含み、○○は57年12月5日から58年12月29日にかけて実施された六レースについて、同様の手口で総額2202万5千円の配当金を着服した疑いが持たれている。
 今回の事件は、犯行から四年以上が経過、不正発行された的中券も既に廃棄処分されるなど物証が乏しいこともあって捜査は難航。当初は詐欺での立件も検討されたが、組合関係者からの裏付け捜査で、複雑な発券、換金システムを解明、横領容疑が固まったとして逮捕に踏み切った。
 調べでは、同競艇場では55年から57年にかけ、発券方法が手売りから機械売りに順次切り替えられたが、○○は「機械の操作に不慣れな職員が、的中券を大量に買おうとした客に、間違った番号の券を発売してしまった。客から抗議があり、追加発券を認めた」などと、客の苦情応対を装い、犯行を巧妙に隠していた。


江戸川競艇の不正発券事件 ○○「計画的犯行」認める 1988.03.13

 東京・江戸川競艇の不正発券事件で、業務上横領容疑で逮捕された東京都六市競艇事業組合参事、○○○○(57)は、警視庁捜査二課、小松川署の12日の調べに対し、「ファンが不正に気付いて騒ぎになっては困るので、追加発券の指示は最終レースをねらって出していた」と自供、ファンをあざむく計画的な犯行だったことを認めた。○○はこれら横領した金の一部を、58年5月にファンへの払い戻し用前渡し金から着服した300万円の弁済にあてており、同課ではこの着服行為についても業務上横領容疑で追送検する。
 また同課は、江戸川競艇場、組合事務所、○○の自宅の三か所を家宅捜索した。
 調べによると、○○が不正発券を指示した六レースはすべて、4日から6日間を単位とする開催節の最終日で、このうち五レースが最終のメーンレースか最終前の準メーンレースだった。○○は「第一レースや二レースなどでは、その後もレースが続き、ファンが不正に気付いた時に大騒ぎになる恐れがあった。最終レースなら、終了後にファンは帰り出すため、おかしいと思っても騒ぎには発展しないと思った」と、ファン心理を計算して不正発券を仕組んでいたことを認めた。


不正舟券の東京・江戸川競艇、4月再開は微妙 運輸省、「対策」を突き返す 1988.03.15

 東京・江戸川競艇場の不正発券事件で、東京都六市競艇事業組合と東京都三市収益事業組合は14日、再発防止対策を運輸省へ報告するとともに、今月で期限切れになるレース開催権の更新を自治省に申請した。これに対し、運輸省は再報告を要求、4月早々からのレース再開は微妙になってきた。
 対策は〈1〉レース開始直前までに、最終得票数とかけ倍率を確定し、これを表示するモニターテレビを増設する〈2〉新しい業務執行体制を確立し責任の所在を明確にする−−など。
 しかし、運輸省は、実施時期が明示されていないほか、内部チェック方法も具体的でないとして、対策をさらに具体化して再報告するよう求めた。


江戸川競艇場不正防止にオッズ表示TVの設置など対策きまる 1988.03.15

 東京・江戸川競艇場を舞台にした当たり舟券追加発行の業務上横領事件で、再発防止策を検討していた施行者、都六市競艇事業組合は十四日、「運営上の改善対策についての 報告書」をまとめ、監督官庁の都、自治省、運輸省に提出した。この改善案には、同競艇場を所有する関東興業(小高滋社長)や、同競艇場で交互に開催する都三市収益事業組合(管理者、臼井千秋・多摩市長)も同意しており、早急に工事に取りかかる。しかし、改善工事は相当の時間を要するため、四月以降の施行権更新が認められても、レースの四月開催は絶望的となった。
 報告書によると、場内各所にオッズ(配当倍率)を表示するモニターテレビを設置。水増し発行のなかったあかしとして窓口締め切り後に発表した数字をレース終了後まで消さないことをした。同組合では当初、観客席正面に電光掲示板の設置を検討したが、同競艇場が河川敷にあり、河川法に抵触するため、モニターーテレビに落ち着いた。
 また、ピットアウト(スタート位置につくため各選手が離岸すること)までに確実に発売窓口を閉め、締め切り後の発売や交換を禁止。破損券の処理も投票窓口では扱わないことにした。
 同競艇場は発券窓口が少なく、締め切り時に舟券購入者の列が残ることもあるため、六十四年度中に発券窓口を増設する。
 運輸省は、この日提出された改善策を受けて都六市競艇事業組合と都三市収益事業組合の四月以降二年間の施行権更新問題を判断する。両組合は昨年十一月、自治大臣に施行権更新を申請しており、自治省が運輸省と協議のうえ決定することになっている。
 間野忠・運輸省海上技術安全局長は「改善策を検討し、不十分な点があれば、追加報告を求め、必要に応じて江戸川競艇場の立ち入り調査も実施したい。施行権の更新については、不祥事の再発防止に確信が得られた時点で自治省と協議する」といっている。


東京・江戸川の不正舟券事件 管理者の町田市長ら引責辞任へ 1988.03.18

 江戸川競艇の不正舟券発行事件で、東京都六市競艇事業組合は、きょう18日午後1時から、府中市の東京自治会館で臨時組合議会を開き、大下勝正・町田市長の管理者退任、新管理者への交代を決める。大下市長は今回の事件の責任をとって退任するもの。


東京・江戸川競艇事件 保管の不正舟券蒸発 59年当時集め封印 1988.03.19

 東京・江戸川競艇の不正発券事件を捜査中の警視庁捜査二課と小松川署は18日、東京都六市競艇事業組合がさる59年、内部告発を受けて総務担当参事、○○○○(57)(業務上横領容疑で既逮捕)の着服疑惑を調査した際に集めた資料のうち水増し発行された舟券が行方不明になっていることを突き止めた。
 同課によるとこれら舟券は、さる59年春、○○の黒いうわさを指摘する投書を受けて同組合が内部調査を行った後、他の資料と一緒にダンボール箱に詰め、各市長が署名したうえで封印、管理者の大下勝正町田市長が事務局に厳重保管を命じたもの。いったん競艇場内の倉庫に収納され、60年2月に組合事務所が現在の渋谷区代々木に移転したのに伴い、新事務所の物品倉庫に移された。
 同課では組合関係者の事情聴取を進め、封印されたダンボール箱の存在を突き止めたが、組合から提出を受けた証拠品のなかには、ダンボールに納められた舟券だけなくなっていた。同課では何者かが捜査を妨害する目的で舟券を抜き取った疑いもあるとみて、当時の管理者の大下市長から事情を聞くなど、資料の保管状況について調べている。


江戸川競艇の開催権更新認めず/自治省  1988.03.25

 東京・江戸川競艇場の不正発券事件で、自治省は25日、今月で期限切れとなる東京都六市競艇事業組合と東京都三市収益事業組合のレース開催権の更新を認めないことを決めた。これは、運輸省と協議した結果、組合から提出された再発防止対策が不十分だと判断したもの。


不正発券の東京・江戸川競艇 再開を運輸省も認めず 29日改善状況を検査 1988.03.29

 東京・江戸川競艇場の不正発券事件で、運輸省は28日、同競艇場でのレース開催団体の東京都六市競艇事業組合と東京都三市収益事業組合から出されていた4月以降の開催権更新を認めないとする自治省の方針に同意する旨を同省に回答、来月早々からのレース再開はできないことが確定した。両組合は同日、不祥事の再発防止対策を運輸省に報告したが、同省はきょう29日、同競艇場の立ち入り検査を行い、これまでの改善状況をチェックする。
 運輸省では、両組合が自治省に出していた2年ごとのレース開催権を、今月いっぱいで期限切れになった後の4月以降も認めるかどうか、自治省から意見を求められていたが、さる14日に両組合が提出した再発防止対策が具体性に欠けていたことなどから、更新を認めないとの自治省の方針に同意する、と正式回答した。
 一方、両組合はこの日、改めて練り直した再発防止対策を運輸省に再提出した。
 同省は、29日に行う立ち入り検査の結果も参考に、再発防止対策が十分なものかどうかを評価し、適切と判断した場合には、開催権の更新権を認める方針。


江戸川競艇不正舟券で初の立ち入り検査 開催の可否を判断/運輸省 1988.03.29

 東京・江戸川区の江戸川競艇場を舞台にした不正発券事件で、運輸省と関東運輸局は29日午後1時から同競艇場の立ち入り検査を行った。レース開催者の東京都六市競艇事業組合と東京都三市収益事業組合の改善対策の実施状況などをチェックするためで、こうした事件での立ち入り検査は初めて。同省は、この検査結果や、改善対策の内容を審査した上で、4月1日からの更新を拒否したレース開催権を再び認めるかどうかを決める方針。
 この日の検査には、同省海上技術安全局・六川宏二調整官ら五人が同競艇場へ出向き、両組合の事務局職員の説明を聞いた。
 対象は、両組合が報告した再発防止対策のうち、レース運営のための設備面の改善個所が中心。その“目玉”のオッズ(配当倍率)大型表示盤は、いったん確定したオッズを、レース開始後に競艇場職員が勝手に変更すればファンが気付けるよう、競艇場の左右二か所に七月中に新設するもので、六川調整官らは、予定した場所に設置が可能かどうかなどを調査する。


江戸川競艇不正発券事件 「○○」を起訴/東京地検 1988.04.02

 東京・江戸川競艇の不正発券事件で、東京地検は1日、東京都六市競艇事業組合の総務担当参事、○○○○(原文/よみがな)(57)を業務上横領罪で起訴した。  起訴状によると、○○は58年12月19日の第十レース開始後、部下の職員に当たり舟券(一万円券)二十枚を追加発行させ、59年1月初め、別の部下を使ってこれを換金、330万円を着服した。○○はこのレースを含め、57年12月以降、六レースについて同様の手口で計2200万円余を横領した疑いが持たれている。


江戸川競艇 月内再開の可能性も/運輸省方針 1988.04.08

 東京・江戸川競艇場での不正発券事件で、運輸省は、主催者の東京都六市競艇事業組合と東京都三市収益事業組合が提出した二度目の再発防止対策案を審査した結果、七日、この案を承認する方針を決めた。この対策案は、自治省も審査するが、両省の承認が条件となり、今月一日から期限切れになっている両組合のレース開催権の更新は、早ければ今月中にも認められ、レース再開の可能性も出てきた。
 先月十五日に両組合が最初にまとめた再発防止対策は、内容が具体性に欠けるなどの理由で承認されなかった。


東京・江戸川競艇舟券不正の「○○」を免職/東京都六市競艇事業組合 1988.04.09

 東京・江戸川競艇場を舞台にした当たり舟券不正発券事件で、東京都六市競艇事業組合(管理者・波多野重雄八王子市長)は八日、業務上横領罪で起訴された同組合参事○○○○(58)(原文・現住所)を懲戒免職にした。また、管理者の報酬を50%、副管理者と理事の報酬を30%、4月から3か月間減給処分とした。


開催自粛で減収11億円 「○○」を着服で追送検/江戸川競艇不正 1988.04.12

 東京・江戸川競艇場で今年2月末に発覚した的中券の不正発券事件で、主催者の都六市競艇事業組合と都三市収益事業組合は12日、レース開催を自粛した三月分の主催者側の損害が約11億2138万円に上るとの試算を明らかにした。
 それぞれの損害は六市の場合が約7億3757万円で、三市が約3億8381万円。主な内訳は、各自治体に配当される収益金の減額分として、六市が約3億8181万円、三市が1億8078万円。また今回の開催中止に伴い、両組合は臨時従業員に対し休業手当を支給したが、こうした支出が両組合で計約8197万円に達した。
 また、六市競艇事業組合元参事、○○○○(58)(4月8日懲戒免職)の不正発券事件を調べている警視庁捜査二課と小松川署は12日、これまで発覚していた六レース中、新たに三レースの配当金と組合からの告発事実になっていた前渡金300万円の着服について東京地検に追送致、同事件の捜査を終了した。
 追送致されたのは57年12月5日第九レースの1032万円、58年2月22日の第十レースの182万円、同3月17日第九レースの250万円の計1464万円の業務上横領容疑。また前渡金は未払い的中券の支払いのため競艇場内の事務所に保管されているもので、○○は58年5月20日ごろ、勝手に引き出して着服していたことを認めていた。


「6月2日再開」も絶望的 不正発券の江戸川競艇、自治省要求の改善進まず 1988.05.22

 的中舟券の不正発券事件で約三か月間開催中止が続いている東京・江戸川区の江戸川競艇は、都六市競艇事業組合が予定していた6月2日開催も絶望的情勢となっていることが二十一日、明らかになった。開催指定権更新にからみ、自治省が六市へのペナルティーとして開催日数削減などの抜本的改善策を要求、六市側がこれに応じない状況が続いているため。開催削減は即、減収につながるため、六市側は運営・管理面での改善策だけで済まし、「あとは自治省との我慢比べ」との姿勢を崩しておらず、開催中止は長期化しそうな様相も見せている。
 今回の事件後、自治省は、「前例のないケース」として、六市(八王子、町田、昭島、武蔵野、調布、小金井市)に「社会的責任を取る形での根本的改善策」、例えば、収益金の一部を他自治体に回したり、開催日数の削減など−−を求めた。この意向を受ける形で両者の仲介役の都は、六市組合と都三市収益組合(多摩、稲城、秋川市で構成)の合併を提案した。同案によれば、組合人員が削減され、開催日もこれまでの月14日から12日に減る上、二日分の権利を未施行の町村などに譲渡できる。
 しかし、六市側は収益金(61年度は各市ごとに7億3000万円)が減るため、「発足経緯も歴史も違う組織での合併はナンセンス」(波多野重雄・八王子市長)と強く拒否。その後も打開策がみつからない状態で、再開には一週間強の準備期間が必要なことから、6月2日開催は絶望的となった。


東京・江戸川競艇、9日再開へ/舟券の不正発券事件 1988.05.26

 東京・江戸川競艇は、的中舟券の不正発券事件で3月から開催が中止されているが、都六市競艇事業組合(管理者・波多野重雄八王子市長)は25日、理事者会議を開き、自治省が再開の条件として求めている六市へのペナルティーについて収益金の一部を公共機関に寄付する形で受け入れる意向を固めた。きょう二十六日にも自治省に改善案を提出する方針。これにより、6月1日に開催更新が認められ、同9日から再開される可能性が出てきた。


江戸川競艇、6月再開が決定 1988.05.28

 江戸川競艇の再開問題で、梶山静六自治相は27日の閣議後の記者会見で、6月開催を認めることを正式に明らかにした。梶山自治相は、再開を認めた理由について、開催団体の八王子など六市が収益の半分を公的な機関に寄付することを約束したことや、不正防止のための競艇設備の改善、人事の刷新を図ったことを挙げた。


江戸川競艇、9日に再開へ/運輸省同意 1988.05.31

 江戸川競艇の再開問題で、自治省から施行者の指定について協議をうけていた運輸省は30日、施設や人事体制に改善が見られたとして、再開に同意した。これを受けて自治省は1日付で、六市と三市の指定を官報に告示、6月9日からレースが再開される見通しとなった。


江戸川競艇の再開 自治省が官報告示 1988.06.01

 自治省は31日、「都六市競艇事業組合(八王子、町田、小金井、武蔵野、調布、昭島の六市=管理者・波多野重雄八王子市長)と都三市収益事業組合(多摩、稲城、秋川の三市=管理者・臼井千秋多摩市長)の江戸川競艇6月実施を認める」と官報に告示した。
 このため、予定通り六市組合が九日から、三市組合は二十二日からの再開を決めた。官報告示は自治、運輸両省が「施設や人事面に大幅な改善が見られた」と再開に同意したためで、六市の市長は初日の九日、全員が競艇場に出向き、レースと運営を見る。
 また、六市の波多野市長は「今後、信頼を回復するよう努力する。“愛され、親しまれる江戸川競艇場”を目指す」と再出発への決意を語った。 なお、両組合の開催認可期間は64年3月31日まで。


江戸川競艇不正発券事件の○○被告が初公判で起訴事実認める 1988.06.04

 東京・江戸川競艇の不正発券事件で、業務上横領罪に問われた都六市競艇事業組合の前事務局次長、○○○○(原文・よみがな)被告(58)に対する第一回公判が三日午後、東京地裁刑事一部(島田仁郎裁判長)で開かれ、○○被告は起訴事実を認めた。
 起訴状によると、○○被告は五十七年十二月から五十八年十二月にかけて、計五回のレースで、出艇後に部下に、当たり舟券(一万円券)延べ八十枚を追加発行させ、換金した計千八百万円を着服した。この日は、着服したうち三百三十万円分について、罪状認否が行われた。追起訴分の残る千四百七十万円分については次回公判で認否を行う。


不正発券事件の江戸川競艇、3か月半ぶり再開 1988.06.09

 的中舟券の不正発券事件で開催中止が続いていた東京・江戸川区の江戸川競艇で、9日、約三か月半ぶりにレースが再開された。
 東京都六市競艇組合管理者の波多野重雄八王子市長が場内のモニターテレビを通じファンに謝罪した。


江戸川競艇の不正発券 元参事に実刑判決/東京地裁 1991.06.01

 東京・江戸川区の江戸川競艇の当たり舟券を不正発券させ、換金したとして業務上横領の罪に問われた東京都六市競艇事業組合元参事○○○○被告(61)に対する判決公判が三十一日、東京地裁刑事一部であり、中川武隆裁判長は「発券、払い戻しの責任者としての立場を利用、競艇事業の信用を失墜させた責任は重い」として、懲役一年十月(求刑同三年)の実刑判決を言い渡した。
 判決によると、○○被告は昭和58年12月に行われたレースで、部下に当たり舟券20万円分を発券させ、330万円を払い戻すなどして計512万円を着服した。
 しかし、判決では、57年12月に、同様の手口で1032万円を着服したとされる横領については「被告の捜査段階の自白や、発券・払い戻しをした部下の証言に信用性がない」などとし、無罪とした。


東京高裁、元東京競艇組合事務局次長の控訴を棄却−−当たり舟券を追加発券事件 1992.04.29

 東京・江戸川競艇で当たりの舟券を追加発券させ、五百十万円余を着服したとして業務上横領罪に問われた元東京都六市競艇事業組合事務局次長、○○○○被告(62)に対し、東京高裁は二十八日、一審の懲役一年十月を支持、控訴を棄却した。
 花尻尚裁判長は「公平な運営への信頼を裏切った刑事責任は重く、実刑はやむを得ない」と述べた。


・競艇恐怖新聞社
・参考資料 読売新聞東京版・毎日新聞東京版・東京新聞社ほか
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